現在日本には数多くのお寺があります。その数約7万7000寺と言われていますが、そのお寺で全て葬儀が行われている訳ではありません。
お寺の種類とは、以下のように「目的の違い」で分類されます。
- 供養寺 境内に墓地があり、祖先を供養してくれる寺のことを「供養寺」と言います。
- 学問寺 「学問寺」とは、僧侶が勉強や修行を積むお寺のこと。
- 祈祷寺 「祈祷寺」とは、祈願の目的で建立された寺を指します。
ここにあげた供養寺(回向寺えこうでら)でのみ葬儀が行われおり、その中で檀家制度を守っているかまたは、檀家と関係なく供養を行っているお寺に分類されます。
また、様々な宗派がありここでは代表的宗派について、説明します。
各宗派について
伝来から1400年余りの年月を経て、日本の歴史風土のなかで、新たな宗祖から生まれた「日本の仏教」です。 現在、大きな宗派として存在しているのは大きく分けると、
【奈良仏教系】法相宗、華厳宗、律宗
【密教系】天台宗、真言宗
【浄土教系】融通念仏宗、浄土宗、浄土真宗、時宗
【禅宗系】臨済宗、曹洞宗、黄檗宗(おうばくしゅう)
【日蓮系】日蓮宗
になります。
おまつりしている御本尊により、下記に分かれています。
・釈迦如来像:法相宗・天台宗・臨済宗・曹洞宗・黄檗宗・日蓮宗
・阿弥陀如来像:浄土宗・浄土真宗
・盧舎那仏:華厳宗
・大日如来:真言宗
・弥勒如来:法相宗
各宗派の特徴
【天台系】
天台宗
- 開祖:最澄(767~833)
- 総本山:比叡山延暦寺
- 本尊:釈迦牟尼仏
- 経典:『法華経』
日本の天台宗の開祖は最澄ですが、天台宗の教えはもともと中国で発展した天台教学を元にしています。
中国に渡り天台教学を学んだ最澄が、日本に伝え、独自の発展を遂げたものが現在の日本の天台宗です。
【真言系】
真言宗
- 開祖:空海(774~835)
- 総本山:高野山金剛峯寺
- 本尊:大日如来
- 経典:『大日経』『金剛頂経』
真言宗も天台宗と同じように、空海が大乗仏教の密教を中国から日本に伝えたのが始まりです。
【法華系】
日蓮宗
- 開祖:日蓮(1222~1282)
- 総本山:久遠寺
- 本尊:十界曼荼羅
- 経典:『法華経』
「南無妙法蓮華経」とお題目をとなえるのが日蓮宗の特徴です。開祖である日蓮が、清澄寺で「南無妙法蓮華経」と唱えたのが日蓮宗の始まりと言われています。
そして、『法華経』のお題目(=タイトル)は、単にタイトルなのではなく、ブッダの悟りそのものであると説いています。
【浄土系】
浄土宗
- 開祖:法然(1133~1212)
- 総本山:知恩院
- 本尊:阿弥陀如来
- 経典:『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』
開祖である法然が生きた鎌倉時代になると、仏教の修行方法が正しく伝わらず、悟りを得る人出てこないという末法と呼ばれる時代に突入していました。
末法の時代では、たとえ修行を行っても悟りを得ることができないし、そもそも一般人では厳しい修行を行えないため、ただ念仏をとなえなさいと勧めたのが始まりです。
浄土真宗
- 開祖:親鸞(1173~1262)
- 総本山:西本願寺・東本願寺
- 本尊:阿弥陀如来
- 経典:『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』
浄土真宗を興した親鸞は、浄土宗の開祖である法然の弟子でした。法然が流罪になったとき、親鸞も同様に越後(新潟)に流罪されています。
法然の弟子でしたので、親鸞は法然が説いた念仏の教えこそ真実の教えであると考えていました。
融通念仏宗
- 開祖:良忍(1072~1132)
- 総本山:大念仏寺
- 本尊:十一尊天得如来
- 経典:『華厳経』『法華経』
融通念仏宗 の開祖である良忍は、念仏三昧中に阿弥陀如来より「一人一切人、一切人一人、一行一切行、一切行一行、十界一念、融通念仏、億百万編、功徳円満」という偈文を授かったとされています。
時宗
- 開祖:一遍(1239~1289)
- 総本山:清浄光寺
- 本尊:阿弥陀如来
- 経典:『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』
時宗の開祖である一遍は、浄土宗西山派の祖である証空の弟子です。ちなみに証空は浄土宗の開祖である法然の弟子です。つまり、一遍は法然の孫弟子にあたります。
一遍は浄土宗が説いている専修念仏を元に独自の道を歩みました。
【禅系】
臨済宗
- 開祖:栄西(1141~1215)
- 総本山:妙心寺・建仁寺など
- 本尊:特定の仏ではなく寺院によって異なる
- 経典:『般若心経』『金剛般若経』『楞厳呪』『観音経』
禅は、精神統一を意味するサンスクリット語「禅那(ぜんな)」の省略形であると言われています。
臨済宗では特定の総本山というのはなく、各お寺が本山として定められています。
曹洞宗
- 開祖:道元(1200~1253)
- 総本山:永平寺・總持寺
- 本尊:釈迦牟尼仏
- 経典:『般若心経』 『観音経』 『修証義』
中国に元々あった曹洞宗を道元が日本に伝えたことで始まったのが日本の曹洞宗の始まりです。
座禅を組んで悟りの境地を目指す点では、臨済宗と同じですが、座禅を組む際の心の持ちようが異なっています。
黄檗宗(おうばくしゅう)
- 開祖:隠元(1592~1673)
- 総本山:萬福寺
- 本尊:釈迦牟尼仏
- 経典:『般若心経』『観音経』
開祖である隠元は、日本の僧侶ではなく中国の僧侶で、来日した際に自らの中国禅の正統を主張し、臨済正宗として活動をはじめました。
元々は臨済宗の一派に属していましたが、明治政府の宗教政策に際に、独立し新しい宗派として分類されることになりました。
【奈良仏教系】
法相宗
- 開祖:基(632~682)
- 総本山:興福寺
- 本尊:定めない
- 経典:『成唯識論』
法相宗は、唯識宗とも呼ばれ、唯識を専門に学んでいる学派です。
自身の心の構造を探究し、心の表れである現実世界の真実の姿(法相)を明らかにすることを目的としています。
律宗
- 開祖:鑑真(688~763)
- 総本山:唐招提寺
- 本尊:定めない
- 経典:『四文律』
中国の律宗を鑑真が日本に伝えたことが始まりです。
華厳宗
- 開祖:杜順(557~640)
- 総本山:東大寺
- 本尊:盧舎那仏
- 経典:『華厳経』
『華厳経』に説かれる思想を根本として、教学を発展させてきました。
『華厳経』は大乗仏教を代表する経典ですが、その内容は難解で長い歴史の中で様々な解釈が生まれています。
まとめ
仏教と一口にいってもその長い歴史の中で、多くの宗派が生まれ、また衰退していきました。
こうしてまとめてみてみると、それぞれの宗派によって大切にするものや、儀式のあり方が全然違っています。
しかし、仏教というものは、宗派が分かれても心のよりどころとしての宗教には変わりはなく、その証拠に
大きなお寺では葬儀の際に会館を利用させて頂く事があり、そのお寺の宗派に変わりなく他の宗派の葬儀を認めているお寺が大半です。
明治維新後の『信教の自由』により、先祖代々の家の宗派に関係なく葬儀を行うことが出来ると言うことも知っておくべきことだと思います。